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新型コロナウイルス感染症は感染後も厄介

[2023.09.10]

 新型コロナウイルス感染症は5類に移行しましたが、感染した後の症状で苦しむ患者さんも多いようです。罹患後症状と呼びますが、定義としては感染後3ヶ月以内に発症し、少なくとも2ヶ月症状が持続、他疾患を除外したもので、倦怠感、呼吸苦、認知機能障害が主症状であり、日常生活に支障を来します。コロナ後遺症やLong COVIDなどとも言われます。定義に該当するまではなくとも、そういった症状が残ることを経験される方も多いのではないでしょうか。

 感染症状は、そのまま持続していくことも、回復後に新たに発症することもあるようです。また、変動や再発もあるようです。2021年の報告(Lancet誌)では感染者の5-10%に症状が残ると言われています1)。いわば「なんでもアリ」なので関連がないようにも思ってしまいますが、オランダでの研究2)でも証明され、英国での報告では4人に1人は日常活動を行う能力が低下していると報告されています3)1年経過しても倦怠感28%、呼吸困難感18%、筋痛26%、うつ症状23%、不安感22%、記憶力低下19%、集中力低下18%、不眠12%残ってしまう、という報告もあります4)。自分の経験としても一部納得がいくと思う経験もしました。少し動くとしんどく感じ、呼吸困難感があったように思います。インフルエンザに感染した後も疲れやすさはありましたが、新型コロナウイルスに感染したあとは、ちょっと他の感染症とはちょっと違うかな、という感覚はありました。まあ、そもそも自分は集中力はもともとたいしてありませんし、いつでもどこでも眠れるので該当するのは一部だけ、といったところではありましたが。

 原因としては、こちらも「なんでもアリ」です。血栓症、免疫異常、自律神経異常、ウイルスの持続感染、腸内微生物の異常、脳の炎症、EBウイルスの再活性化などが言われていますが、はっきりとした答えは出ていないようです5)。発症リスクとしては、若年層、女性、健康状態の悪化、病気の最初の2週間の不十分な休息などが指摘されているようです6)。色々な悪影響を身体に残していく病気なのだというのは感じます。いくらか改善させられる可能性のあることをやっていくことは出来ますが、感染前とパフォーマンスが変わらない状態へ戻せるのか、戻るのかはナゾです。

 聖マリアンナ医科大学病院のデータによると、40代をピークとして20-50代に患者が多いそうです。そして、倦怠感、やる気の低下、不安、忘れやすくなる、など仕事のパフォーマンスを低下させる症状があり、持続している患者が多いようです。このことから、Long COVIDは労働生産性を落として国の経済に悪影響を与えているのは間違いないと考えられます。

 この病気は、検査データやMRIでも特に異常が無く、いろんな科に行ってもよくならない、まわりから理解されがたい病気ですが、みみ・はな・のどに関連して違和感があるような場合、上咽頭擦過療法EATという治療があり、一定の効果があるようです。治癒機序は不明で保留していたのですが、効果があるらしいという話がちらほらと聞こえてくるようになったため、当院でも2022年より同治療を開始しました。すると、症状にあわせた内服と同処置をすることにより、比較的早期に不快な症状がとれる患者様がいることを体感しております。ご興味あれば、是非一度ご相談ください。

 

<参考文献>

1) 6-month consequences of COVID-19 in patients discharged from hospital: a cohort study. Lancet. 2021

2) Persistence of somatic symptoms after COVID-19 in the Netherlands: an observational cohort study. Lancet. 2022

3) Prevalence of ongoing syptoms following coronavirus infection in the UK:30 March. 2023

4) Long-Term Sequelae of COVID-19: A Systematic Review and Meta-Analysis of One-Year Follow-Up Studies on Post-COVID Symptoms. Pathogens. 2022

5) Biological mechanisms underpinning the development of long COVID. iScience. 2023

6) Characteristics and impact of Long Covid: Findings from an online survey. PLoS One. 2022

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